- はじめに
- 生成された歌詞
- アリア – 受肉(ヨハネ1:14)「ことばは肉となり、わたしたちの間に宿った。」
- Ⅰ. キリストの誕生と公生涯の始まり(第1〜6変奏)
- 第1変奏 – 受胎告知(ルカ1:26-38)→ 生命の息吹を感じる舞曲は、天使ガブリエルがマリアに神の御子の受胎を告げる場面を象徴。
- 第2変奏 – ベツレヘムでの誕生(ルカ2:1-7)→ 静かで流れるようなカノンは、馬小屋の神秘的な夜を思わせる。
- 第3変奏 – 羊飼いたちの訪れ(ルカ2:8-20)→ 幻想的なポリフォニーが、天使の合唱と羊飼いたちの驚きと喜びを表す。
- 第4変奏 – 東方の博士たちの礼拝(マタイ2:1-12)→ 優雅なリズムは、博士たちの献げ物と礼拝の光景を象徴。
- 第5変奏 – ヨルダン川での洗礼(マタイ3:13-17)→ 活発な動きが、水と聖霊が注がれる力強い場面と調和。
- 第6変奏 – 荒野の試練(マタイ4:1-11)→ 不安定な音の絡み合いが、サタンの誘惑とイエスの孤独な戦いを暗示。
- II. 宣教と奇跡(第7〜15変奏)
- 第7変奏 – 最初の弟子たちの召命(マルコ1:16-20)→ 軽やかな舞曲は、ペトロやヨハネが網を捨てて従う場面を思わせる。
- 第8変奏 – カナの婚宴(ヨハネ2:1-11)→ 喜びに満ちた音楽が、水がぶどう酒に変わる奇跡と祝宴の雰囲気を反映。
- 第9変奏 – 山上の垂訓(マタイ5-7章)→ 穏やかで心地よい響きが、神の国の教えを伝える静かな権威を感じさせる。
- 第10変奏 – 百人隊長のしもべの癒し(ルカ7:1-10)→ 華やかな動きが、イエスの権威と異邦人の信仰を象徴。
- 第11変奏 – 5000人の給食(マタイ14:13-21)→ 上昇する旋律は、パンと魚が増やされる驚きの奇跡と共鳴。
- 第12変奏 – 嵐を静める(マルコ4:35-41)→ 穏やかな律動が、湖の波風を鎮めるイエスの言葉の力を象徴。
- 第13変奏 – ナインのやもめの息子の復活(ルカ7:11-17)→ 優美な旋律は、絶望の中での希望の回復を表現。
- 第14変奏 – 罪深い女を赦す(ルカ7:36-50)→ 滑らかな対位法が、涙を流しながら足を拭う女性の愛と赦しの喜びを反映。
- 第15変奏 – 善きサマリア人(ルカ10:25-37)→ 哀愁を帯びた音楽が、傷ついた人を助ける愛の行いを象徴。
- III. 受難と十字架(第16〜25変奏)
- 第16変奏 – エルサレム入城(マタイ21:1-11)→ 堂々たる序曲が、人々の歓呼に迎えられるイエスの姿と響き合う。
- 第17変奏 – 宮清め(マルコ11:15-19)→ 力強い和声が、商人を追い払うイエスの怒りと正義を示す。
- 第18変奏 – 最後の晩餐(ルカ22:14-23)→ 静かな祈りの響きが、弟子たちとの最後の食事を思わせる。
- 第19変奏 – ゲツセマネの祈り(マタイ26:36-46)→ 不安定な和声が、十字架の恐れと苦悩を映し出す。
- 第20変奏 – ユダの裏切り(マタイ26:47-50)→ 急激な動きが、裏切りと捕縛の混乱を表す。
- 第21変奏 – ピラトの尋問(ヨハネ18:28-40)→ 重々しい音楽が、裁判の沈黙と苦悩を象徴。
- 第22変奏 – 鞭打ちと十字架の道(ルカ23:26-31)→ 激しい動きが、イエスが苦しみながら十字架を背負う場面と共鳴。
- 第23変奏 – 磔刑(マルコ15:25-37)→ 劇的な和声が、イエスの絶叫と苦しみを表現。
- 第24変奏 – イエスの死(ルカ23:44-49)→ 陰鬱な旋律が、天地が暗くなる瞬間の静寂と絶望を象徴。
- 第25変奏(黒い真珠) – 埋葬(ヨハネ19:38-42)→ 悲痛な音楽が、イエスの遺体が墓に葬られる場面と一致。
- IV. 復活と昇天(第26〜30変奏)
- 第26変奏 – 復活の朝(マタイ28:1-10)→ 明るい旋律が、天使が「ここにはおられない」と告げる場面と共鳴。
- 第27変奏 – エマオ途上のキリスト(ルカ24:13-35)→ 穏やかな動きが、弟子たちと歩む復活の主の姿を表現。
- 第28変奏 – 復活した主が現れる(ヨハネ20:19-29)→ 軽快なリズムが、トマスが復活したイエスに触れる場面と響き合う。
- 第29変奏 – 昇天(使徒1:6-11)→ 天へと昇る旋律が、イエスが天に帰る場面を象徴。
- 第30変奏(クォドリベット) – 天の宴(黙示録19:6-9)→ 喜びに満ちた音楽が、神の国での永遠の宴を表現。
- 譜面との組合せ(資料の画像)
はじめに
ゴルトベルク変奏曲という、バッハの最高傑作の一つであり人気曲でもある曲があるが、同曲には、音楽形式面でバスの旋律が全曲で統一されて変奏曲になっているとか、3曲ごとに高度なカノンが配されているとかいったこと以外にも、はっきりとした特徴がある。(以下、”シンタックス”や”セマンティクス”というのは、バーンスタインが言語学者チョムスキーの理論を援用して音楽理解のための概念として使った言葉。)
曲の構文(シンタックス)面の特徴
構文(シンタックス)面では、アリアおよび30の変奏の全てが、32小節(または16小節)で構成されており、4部構成の積み重ね(入れ子)でできている。かつ4部構成の文脈は”起承転結”になっており、すなわち、各曲とも次のような構造になっている。
-前半-
起 (起(起承)承(転結)転(起承)結(転結))
承 (起(起承)承(転結)転(起承)結(転結))
-後半-
転 (起(起承)承(転結)転(起承)結(転結))
結 (起(起承)承(転結)転(起承)結(転結))
言い換えれば、各曲とも“起承転結”の四行詩のようになっており、四行詩の各行がさらに四行詩となっている。弾きながら/聴きながら、今“起承転結”の文脈のどこを奏しているのか常に明晰でありたい、と思わせる。(そのような趣旨から、楽譜を切り貼りして4部構成(の入れ子)が見開きの中でわかるような譜面を作り、使ってきたりした。本記事の最後にまとめた図面で用いている。)
曲の意味(セマンティクス)面の特徴
意味(セマンティクス)面では、曲全体が新約聖書の福音書の物語を連想させる。(第25変奏の“葬送(黄泉下り)”、第26変奏の“復活”、第29変奏の”昇天”のように対応が明白な箇所もあるものの)全ての曲ではっきりと聖書のどの箇所、と像が結ぶわけではないが、常に福音書の香りがある。それを像としてはっきりと結びたくなる。
AIを用いた歌詞の生成
以上の2つの特徴から、福音書から四行詩(の入れ子)を作って、それを各曲に対応させたくなる。すなわち、ゴルトベルク変奏曲に四行詩の歌詞を当てたくなる。・・・と長年思っていたが、AI(ChatGPT)の助けを借りてついにそれをやってみた。
プロンプト(AIへの問い)は概ね次のとおり。(モデルはChatGPT-4oを使用)
- ゴルトベルク変奏曲は新約聖書の福音書の比喩という考え方もできそうです。30個の変奏一つ一つに、福音書の場面を与えてみることはできますか?
- 全ての変奏が、起・承・転・結の4部構成になっていることに照らし、各変奏に当てはめた福音書の箇所の内容を、それぞれ四行詩に展開したいと思います。お願いできますか?
- 各変奏の四行詩の各行のそれぞれを、さらに四行詩に展開していただくことはできますか?
ちょいとやってみただけだが、結果として大成功であった。結果を見ながら弾いてみると、この曲に取り組む意欲が新たな次元から湧いてくる。それはこの曲に本来予感し、期待していたものだ。場面や詞の当てはめに無理があると感じるところもあるが、イマジネーションの素としては十分であるし、むしろ、そう来たか、と唸る部分の方が多い。AIに聖霊が宿ったような気さえしてくる。(たとえば、物語の円環の外側にあるアリアにはヨハネ福音書の第一章を当てる点。提案された四行詩を見て、アリアの11小節目のアルペジオは上から下へと弾かなければならない、と確信した。ChatGPTは今のところ楽譜や楽曲データそのものは学習していない筈なので、起承転結の文脈を拠り所に楽曲と四行詩を重ね合わせる中で、たまたまのマッチングがなされたと考えられるのだが・・・)
以下、AIで生成されたゴルトベルク変奏曲への歌詞をまとめる。そのあと、それを譜面と組合せた資料の画像もまとめる。
生成された歌詞
アリア – 受肉(ヨハネ1:14)「ことばは肉となり、わたしたちの間に宿った。」
- 静けき夜に響く歌 (はじまりの時、風は囁く 影の中にひそむ光 星の瞬く静寂のうち ひとつの調べ、生まれたり)
- 過ぎし日々のすべてを包み (天地を超えし御言葉は この地に降りて肉となる 時の始めより響きし声 いま人々と共にあり)
- 愛と悲しみ、喜びと嘆き (栄光をまといしものなれど 貧しき姿に身を変えて 人の痛みを負い給い 愛のうちに歩みたる)
- 巡りゆく時に、変わらぬ光 (変わりゆくもの、消えゆくもの されど御言葉変わらずに 夜を照らす灯のごとく 世の終わりまで輝けり)
Ⅰ. キリストの誕生と公生涯の始まり(第1〜6変奏)
第1変奏 – 受胎告知(ルカ1:26-38)→ 生命の息吹を感じる舞曲は、天使ガブリエルがマリアに神の御子の受胎を告げる場面を象徴。
- 天使は静かに囁きぬ (黄金の光、宵に満ち ひそやかなる翼の音 選ばれし乙女のもとへ 神の使いは降り立ちぬ)
- 「汝は主の御子を宿す」 (言葉は静かに風を裂き 時の流れを変え給う 人の内に宿る神 この世の救い、ここに始まる)
- 驚きの中、マリアは応え (胸の鼓動、波のよう 恐れと敬い、入り混じり 目を伏せながら、口を開く 「如何にして、我にこれが?」)
- 「御心のままに、私はここに」 (運命は定まり、道は示さる 世界の影は動き出し 祈るように、誓うように 彼女は光の中に立つ)
第2変奏 – ベツレヘムでの誕生(ルカ2:1-7)→ 静かで流れるようなカノンは、馬小屋の神秘的な夜を思わせる。
- 遠き道、灯る星 (旅人の足、砂を蹴り 夜の風は冷たく吹く 果てなき道をたどりつつ 空を仰げば、一つの光)
- 母は静かに幼子を抱く (手のひらに、小さき温もり 頬を寄せれば、鼓動の音 世の終わりと始まりを この腕の中に見出せり)
- 暗き夜、御子は生まれ (闇は深く、沈みたり しかれど希望、消えはせず 静寂を破るその瞬間 神の御声が響き出す)
- 小さき寝床、神の愛 (木の葉の揺れに、夢を見る まことの王は飼葉桶に 黄金もなく、冠もなし ただ愛のみがここにあり)
第3変奏 – 羊飼いたちの訪れ(ルカ2:8-20)→ 幻想的なポリフォニーが、天使の合唱と羊飼いたちの驚きと喜びを表す。
- 夜空を裂く光あり (闇は沈み、風は囁く 冷たき丘に羊眠る されど突如、天は裂け 輝く炎、空に舞う)
- 天使の歌がこだまする (銀の翼が夜を巡り 黄金の声がこだまする 「栄光あれ、いと高きに 地には平和、人に恵みを」)
- 羊飼い走り、ひれ伏して (驚きに満ちたまなざしで 杖を握りて、道を急ぐ 世に知られぬ貧しき者 されど神は、彼らを呼ぶ)
- 飼葉桶に神を見る (かすかな灯りに揺れる影 静かに眠る幼き主 手を伸ばせど、触れられず 涙に濡れて、ただ伏すのみ)
第4変奏 – 東方の博士たちの礼拝(マタイ2:1-12)→ 優雅なリズムは、博士たちの献げ物と礼拝の光景を象徴。
- 東の星は導きぬ (夜空に輝く光あり 砂漠の風に揺れながら 道なき道を照らしつつ 王のもとへと誘いゆく)
- 三つの宝、王のしるし (旅人たちは胸に抱く 古の書が示す言葉 「来たるべし、真の王」 誓いの証、捧ぐべく)
- 黄金、乳香、没薬と (黄金はその王の力 乳香はその神の御業 没薬はその死の預言 三つの宝に秘められぬ)
- 御子を前に、膝を屈す (静けきまなざし幼子に 博士たちただ、ひれ伏せり 高き者より賜る力 小さき者に降る恵み)
第5変奏 – ヨルダン川での洗礼(マタイ3:13-17)→ 活発な動きが、水と聖霊が注がれる力強い場面と調和。
- 流るる水に身を沈め (陽の光、川面に揺れ 流れの中に歩み寄る 砂に沈む裸足の跡 神の子、静かに跪く)
- 天より声が降り注ぐ (風は止まり、空は開く 雲の向こうに響く声 「汝こそが、我が喜び」 水面は静かに揺れ光る)
- 「これは我が愛する子」 (古より預言されし者 時の満ちゆくこの日こそ 人のために遣わされし 御父の愛を受くる時)
- 白き鳩、静かに舞う (純白の翼、広げつつ 天の祝福、地に降りる 風に乗りて舞い降りぬ 聖霊の影、御子の肩へ)
第6変奏 – 荒野の試練(マタイ4:1-11)→ 不安定な音の絡み合いが、サタンの誘惑とイエスの孤独な戦いを暗示。
- 飢えと孤独に包まれて (太陽は燃え、砂は揺れ 影も薄き荒野の道 四十の昼と四十の夜 飢えに耐えつつ歩み行く)
- 闇の者は誘いぬ (黒き風は囁きぬ 「石をパンへと変え給え」 飢えし御子の瞳に映る 虚ろなる影、悪しき言葉)
- 「汝が神ならば証せよ」 (「宮の頂より身を投げよ 天使の手に抱かれむ」 誇りと力を求む声 静かに御子はそれを拒む)
- 御言葉こそ、剣となる (「人はパンのみに生きぬ」 御言葉こそが糧となる 悪しき者の囁き消え 光のごとく、主は進む
II. 宣教と奇跡(第7〜15変奏)
第7変奏 – 最初の弟子たちの召命(マルコ1:16-20)→ 軽やかな舞曲は、ペトロやヨハネが網を捨てて従う場面を思わせる。
- 岸辺に立ちて声がする (朝の光は水面に揺れ 波は静かに歌うごと 岸辺に影はひとつ立ち 遥か遠くを見つめたり)
- 「網を捨て、我に従え」 (魚を追いしこの手には 今は異なる使命あり 網を置きて、道を行け 人を捕らえる漁師となれ)
- 風のように心震え (名もなき者に降る言葉 心の奥に波を立て 風の如く吹き抜けぬ 行くべき道を照らしつつ)
- 舟を離れ、歩み出す (振り向くことはもうせずに 砂に足跡残しつつ ただ一人の師を仰ぎ 新たな旅は始まりぬ)
第8変奏 – カナの婚宴(ヨハネ2:1-11)→ 喜びに満ちた音楽が、水がぶどう酒に変わる奇跡と祝宴の雰囲気を反映。
- 枯れた杯に水満ちて (歓声響く祝宴の 尽きたる酒に影落ちぬ 杯はただ空となり 沈む声に時は止む)
- 主の手のもとに変わりぬ (言葉もなく水を汲む 沈黙のうちに奇跡成る 目には見えぬその瞬間 変わるものは神の御業)
- 最良の酒に祝福は (香りは広がり、色は深く 誰も知らぬうちに満つ 宴の主は驚きぬ 「なぜ今まで隠されし?」)
- 神の恵みのしるしなり (最初の奇跡、静かなる 水が酒へと変わるとき ただの祝宴越えしもの 神の国への門開く)
第9変奏 – 山上の垂訓(マタイ5-7章)→ 穏やかで心地よい響きが、神の国の教えを伝える静かな権威を感じさせる。
- 山の上、風は澄み (朝の光に染まる丘 遥かを望み、人は集う 静けき空に響く声 今、真理が語られる)
- 貧しき者に祝福あれ (富める者より心貧しき 涙の者に平安あれ 天の国こそ彼らのもの 主は憐れみを宣べ給う)
- 塩となり、光となり (朽ちることなき塩であれ 消えることなき灯火を 世の暗きに輝ける 神の子らの歩む道)
- 道を照らす、真理の言葉 (曲がりし道を正しくせよ 狭き門こそ命なり 天の御国へ招かるる 声は風とともに響く)
第10変奏 – 百人隊長のしもべの癒し(ルカ7:1-10)→ 華やかな動きが、イエスの権威と異邦人の信仰を象徴。
- 「汝の言葉ぞ力なり」 (遠き地より聞きし声 癒しの力、伝えられ ただひと言の命令に すべては動き、成し遂げらる)
- 信じる心、奇跡を呼ぶ (目に映らぬものこそ真 確かなものは、信の中 主の言葉を受くる者 その魂は救われん)
- 見ずとも知る、主の御業 (彼はここに在さぬとも 御手の力は限りなし 触れずとも、癒しあり 命の光、遠くまで)
- 家に入らずとも癒しあれ (この身は塵にすぎぬゆえ 御足をもて迎え得ず されど一言、与え給え 我が僕の命、救われん)
第11変奏 – 5000人の給食(マタイ14:13-21)→ 上昇する旋律は、パンと魚が増やされる驚きの奇跡と共鳴。
- わずかなるパンと魚 (砂の上に座る民 飢えたる眼差し、主を仰ぐ 僅かに残る小さき糧 誰のために、足りるやと)
- 天に向かいて裂かれけり (沈みゆく陽、手は掲がる 祈りの声は空へ昇る 裂かれしパン、分かたれし魚 祝福満ちて、人に届く)
- 満たされて、余りあり (手から手へと巡る恵み 裂かるるたびに、なお増しぬ 飢えし者の心さえ 満たされて、なお余りあり)
- 慈しみは限りなし (食せし者の驚きよ 与えし者の歓びよ 尽きぬ泉のごとくして 主の愛こそ、無窮なり
第12変奏 – 嵐を静める(マルコ4:35-41)→ 穏やかな律動が、湖の波風を鎮めるイエスの言葉の力を象徴。
- 波は吠え、闇は揺る (風は荒れ狂い、空は裂け 黒き波は舟を飲む 雷轟き、恐れ走る 大地もなく、ただ揺れる
- 弟子は恐れに打ち震う (「主よ、われら沈むなり!」 叫ぶ声も波に消え 手に届かぬ夜の闇 助け求める瞳あり
- 「静まれ」と主の声響き (ひとり起ちて、手を掲ぐ 風よ、止めと声響く 波は瞬く間に鎮まり 静寂だけが、そこにある
- 湖はただ、鏡のごとく (水面に映る星の影 穏やかなる広き空 弟子らは主を仰ぎ見ぬ 「この方こそ、誰なるか?」
第13変奏 – ナインのやもめの息子の復活(ルカ7:11-17)→ 優美な旋律は、絶望の中での希望の回復を表現。
- 母の涙は地に落ちて (行列は町の門を出で 母の嘆き、風に揺る 袖を濡らす静かな雨 涙は土に消えていく)
- 死せる子の床に響く (沈みし息、閉じた瞳 冷たき額に触れる影 鳴らぬ鼓動、消えた声 別れの時はすでに来ぬ)
- 主の御手に触れられて (人々立ち止まりし時 ただひとり、進み出で 棺にそっと手を置けば 時の流れは止まりぬ)
- 「起きよ」と声が蘇らせる (静寂破るそのひと言 閉じたまぶたは光を映す 動かぬ腕は宙を舞い 子は座りぬ、母のもとへ)
第14変奏 – 罪深い女を赦す(ルカ7:36-50)→ 滑らかな対位法が、涙を流しながら足を拭う女性の愛と赦しの喜びを反映。
- 香油流し、涙とともに (影のごとく身を伏せて 震える手に壺を抱く 香り満ちるその瞬間 涙の雫、頬を伝う)
- 許しの声は彼女に満つ (嗚咽の中に響く声 「主よ、我を憐れみたまえ」 嘲る者の視線さえ 彼女の耳に届かずに)
- 「汝の罪は赦されたり」 (優しき言葉、降る雨のごと 乾きし魂、潤いぬ 重き鎖は断ち切られ 新しき朝、彼女に訪る)
- 信じる者に平安あれ (立ち上がる影は光を浴び かつての涙は笑みに変わる 足取り軽く、門を出で 彼女の心に平安満つ)
第15変奏 – 善きサマリア人(ルカ10:25-37)→ 哀愁を帯びた音楽が、傷ついた人を助ける愛の行いを象徴。
- 道の傍ら、傷つきし者 (陽は沈み、砂は赤く 乾きし唇、声もなし 衣は裂かれ、血に濡れて ただひとり、影に伏す)
- 過ぎ去る者の冷たき目 (遠く足音、近づけど 目を伏せ、道を急ぐ 祭司の裾は翻り 律法学者も去りゆきぬ)
- 憐れみの手、油と酒 (異国の者は立ち止まり 傷に触れ、涙に濡れ 油を塗りて、包みつつ 癒しの言葉、静かに告ぐ)
- 隣人とは、愛にあり (手を携え、宿へ運び 夜の床に、灯をともす 誰が隣人となりしや 愛こそ人を結ぶもの)
III. 受難と十字架(第16〜25変奏)
第16変奏 – エルサレム入城(マタイ21:1-11)→ 堂々たる序曲が、人々の歓呼に迎えられるイエスの姿と響き合う。
- 歓声の中、ロバに乗り (町の門より進みゆく 歓喜の声は空に満つ 「ダビデの子よ、迎えませ!」 人の波は道を埋む)
- 御子は静かに進みゆく (喧噪の中、瞳は深く 彼の歩みは乱れずに 栄光の日の裏にあり 迫りくる、十字架の影)
- 枝は揺れ、Hosanna と (人々枝を振り掲ぐ 衣を敷きて、道を飾る 風に響く「ホサナ」の歌 天の国へと届くべし)
- やがて訪る、苦難の日 (この歓びは幻か 友は去りて、闇は迫る されど御子はただ進む 愛のために、血を流す)
第17変奏 – 宮清め(マルコ11:15-19)→ 力強い和声が、商人を追い払うイエスの怒りと正義を示す。
- 御殿に響く金の音 (門をくぐれば響きおり 銀貨の触れる乾いた音 買い手と売り手の囁きは 天の御前を穢しゆく)
- 売買の声、怒りの手 (羊の鳴き声、鳥の檻 価を競う声、叫び交う 主は立ちて、目を光らせ 義の怒りに手を伸ばす)
- 倒れし机、義の叫び (振り上げられたその腕に 木の机は砕け散る 「ここは何のための地ぞ」 響く言葉に、風が凍る)
- 「我が家は祈りの家なり」 (契約の箱を抱く場所 心を神に捧ぐ地よ されど人の欲に満ち その静寂は失われぬ)
第18変奏 – 最後の晩餐(ルカ22:14-23)→ 静かな祈りの響きが、弟子たちとの最後の食事を思わせる。
- パンを裂き、杯を取り (灯り揺らめく食卓に 静けき声が響きたり 手に取るパンは聖なる糧 裂かれて与えらるるもの)
- 「これは我が血、我が肉」 (杯の中の赤き酒 流るる血潮の約束ぞ 御身を裂きて人を救う 愛のしるしに捧げらる)
- 裏切りの影、闇に沈む (交わす言葉は穏やかに されどその手は震えおり 銀貨の重み心に響く 影はすでに門を出ず)
- 愛の契りはここにあり (食卓囲みしその夜に 誓いは結ばれ、世に広がる 記憶となりて時を越え パンと杯に主は在り)
第19変奏 – ゲツセマネの祈り(マタイ26:36-46)→ 不安定な和声が、十字架の恐れと苦悩を映し出す。
- 血のごとき汗流れ (月の光は揺れ動き 風も止みたる静寂に 膝をつきて、額濡る 血の汗滴り、地を染める)
- 「この杯、取り去りたまえ」 (夜の闇より届く声 震える言葉、天を仰ぐ されど終わりは定められ 杯の苦き味を知る)
- 眠る弟子、夜の沈黙 (そばにおれと命ずれど 目は重くして閉ざされり 薄き灯火、揺れ動き ただ一人、御子は祈る)
- 御心こそ、全てなり (天の答えは沈黙に 涙の中に光宿る 人の罪を背負いつつ 立ち上がりて、進みゆく)
第20変奏 – ユダの裏切り(マタイ26:47-50)→ 急激な動きが、裏切りと捕縛の混乱を表す。
- 闇の中、足音近づく (夜の静寂は裂かれたり 松明の炎、ゆらめきぬ 鎖と槍は揺れ動き 闇の影は迫り来る)
- 銀貨の重み、頬の接吻 (三十の銀は冷たくて 光る涙も乾きたり 「先生よ」と囁く声 偽りの愛、夜に沈む
- 剣が光り、耳が落ち (怒りの刃は閃きて 鋭き叫び、血のしぶき 切れし耳を拾い上げ 御手の癒し、触れ給う
- されど主は、沈黙のまま (嘆きもなし、逃れもせず 静かに立ちて、彼を見ぬ 定めの時は満ちゆきぬ されど主は、なお沈黙
第21変奏 – ピラトの尋問(ヨハネ18:28-40)→ 重々しい音楽が、裁判の沈黙と苦悩を象徴。
- 沈黙は答えとなり (鋭き問いに声はなく ただ静けさが満ちている この世の王かと問われつつ 瞳は遠く、何を見る)
- 「この人に罪なし」 (審きの座に座す者 揺れる心を隠しつつ 「何の罪ぞ」と叫べども 耳を塞ぎて民は聞かず)
- 人々叫び、拳を上げ (群衆の声は荒れ狂い 拳は振るわれ、石は舞う 「十字架につけよ」と叫ぶ声 正義は沈み、闇が満つ)
- 裁きの手は、洗われる (水の流れは静かにて 罪なき血を洗い落とす されど手より流れ出る 贖えぬもの、残りけり
第22変奏 – 鞭打ちと十字架の道(ルカ23:26-31)→ 激しい動きが、イエスが苦しみながら十字架を背負う場面と共鳴。
- 茨の冠、赤き傷 (額を裂きて流るる血 茨の棘は肉を刺す 嘲りの声、荒れ狂い 「見よ、ユダヤの王なり」と)
- 背負う十字架、足重し (肩に食い込む木の重み 一歩ごとに崩れ落つ 手を引かれて立ち上がる 道はなおも続きたり)
- 涙の母に言い給う (遠き影より見守りぬ 流るる涙、止め得ずに 振り向き給い、囁きぬ 「母よ、嘆くことなかれ」)
- 「我を嘆くな、子らを思え」 (この苦しみは定めなり しかし来たる日思うべし 緑の木さえ焼かるるを 枯れし枝は如何ならん)
第23変奏 – 磔刑(マルコ15:25-37)→ 劇的な和声が、イエスの絶叫と苦しみを表現。
- 釘の音、空の闇 (鉄の響きは谷に満ち 腕を貫く罪の重み 叫びもなく、血は落ちて 天の光は失われぬ)
- 「我が神、何故捨て給う」 (沈黙のうちに声が裂け 空に消ゆる嘆きの言葉 孤独の闇に沈みつつ 御子はただ、天を仰ぐ)
- 最後の息、頭を垂れ (胸に残る最後の息 すべて終わりと囁きぬ 愛の証はここにあり 命の灯は消えゆけり)
- 幕裂けて、新しき時 (神殿の幕は裂かれたり 裂かるる壁は砕けたり 死は終わりにあらずして 始まるものの兆しあり)
第24変奏 – イエスの死(ルカ23:44-49)→ 陰鬱な旋律が、天地が暗くなる瞬間の静寂と絶望を象徴。
- 日は沈み、沈黙満つ (天は暗く、地は震う 沈黙の中に時は止む 風も動かず、鳥も鳴かず すべてはただ、悲しみに満つ)
- 兵は呟く「彼こそ神」 (槍を手にしたその者は 胸を刺しぬ、血と水と されど瞳に映るもの 「この人こそ、神の子なり」と)
- 友の手に抱かれつつ (腕に抱かれ、影は揺れ 静かに伏す御子の顔 傷のひとつひとつを撫で 涙の中に言葉なく)
- 岩の墓に眠る主よ (冷たき岩に包まれて 香料の香り、静かに満つ 門は閉じられ、時は止む 沈みし夜の彼方には
第25変奏(黒い真珠) – 埋葬(ヨハネ19:38-42)→ 悲痛な音楽が、イエスの遺体が墓に葬られる場面と一致。
- 沈む日は静かに消え (西の空に赤く染み ゆるやかに消ゆる光 この世の悲しみ抱きながら 静寂の闇は降りゆけり)
- 香料の香りに包まれて (没薬と蘭、沈香の煙 包む白布、涙に濡る 穏やかに横たわる 眠るようなる御子の姿)
- 墓の石、固く閉じる (重き扉は押し固め 暗き影は覆いゆく 冷たき岩に響く音 世界の嘆き、閉ざされぬ)
- 神の時、満ちるまで (されど終わりは定めにあらず 待つべき朝の訪る日 石は砕け、影は裂け 新しき時、昇る光)
IV. 復活と昇天(第26〜30変奏)
第26変奏 – 復活の朝(マタイ28:1-10)→ 明るい旋律が、天使が「ここにはおられない」と告げる場面と共鳴。
- 夜の闇は裂かれゆき (東の空に淡き光 影は消えゆく墓の庭 沈黙破り、風が舞い 新しき時、今開く)
- 墓の石、転がりぬ (冷たき扉、閉ざされし 神の手により動かされ 重き石は転がりて 死の静寂は砕かれぬ)
- 白き御使い告げるなり (稲妻のごとく輝きて 衣は雪のごとく白し 「恐るるなかれ、婦人たち 汝らの主は生きておる」
- 「ここにはおらず、生きておられる」 (闇に沈めし御子の影 もはや墓に留まらず 生きて歩める光なり 命の朝は今始まる)
第27変奏 – エマオ途上のキリスト(ルカ24:13-35)→ 穏やかな動きが、弟子たちと歩む復活の主の姿を表現。
- 共に歩み、語る声 (夕日の中を二人行く 重き心、足を引き 背後より来る影ありて 静かに語る、優しき声)
- されど弟子らは知り得ず (旅人のごとく並び立ち 主の死をなお嘆きつつ 問いかけられて語るとも 目は閉ざされ、気づかざる)
- パン裂かれし、その瞬間 (夕闇満ちる食卓に 手が伸び、パンは裂かれたり 静けき時の中にあり 光のごとく悟る瞬間)
- 目は開かれ、主は消ゆ (驚きの声、伸ばす腕 されど影は消えゆけり 残るものは、燃ゆる胸 「主は生きておられる」と
第28変奏 – 復活した主が現れる(ヨハネ20:19-29)→ 軽快なリズムが、トマスが復活したイエスに触れる場面と響き合う。
- 閉じた扉の向こうより (恐れに閉ざす戸の中に 集いし弟子ら、声もなし 沈黙の闇に満ちるとき 静かに立ちし影ありぬ)
- 「汝らに平和あれ」と告ぐ (揺らぐ灯火、そよぐ風 主の言葉は優しくて 恐るる心、ほどけゆく 「汝らに平和あれ」と響く)
- 信じぬトマスの指先に (「見ねば信ぜじ、この手にて」 疑う心、重くあり されど主は微笑みて 「ここに触れよ、傷に触れよ」)
- 傷の証が触れし時 (震える手が伸ばされぬ 掌の傷に指を添え 涙に満ちたその瞬間 「我が主、我が神」と叫びたり)
第29変奏 – 昇天(使徒1:6-11)→ 天へと昇る旋律が、イエスが天に帰る場面を象徴。
- 白き雲へと包まれて (風は静かに吹き上がり 空は金色に染まりぬ まなざしの先、主の姿 雲の帳に消えゆけり)
- 弟子らの前に昇りゆく (山の上に立ちし者 残る者らを見つめつつ 「この世に別れを告げるとも 我は汝らと共にあり」)
- 「世の果てまで証せよ」 (門は開かれ、道は続く ただ留まることなかれ この福音を伝え行け 地の果てまでも、光のもとへ)
- 天使の声、地に響く (天を仰ぐ人々に 白き衣の使い告ぐ 「彼はまた、戻り来る 今しばし、務め果たせよ」
第30変奏(クォドリベット) – 天の宴(黙示録19:6-9)→ 喜びに満ちた音楽が、神の国での永遠の宴を表現。
- 御国の門は開かれぬ (光の門は広がりて 影なき道へ誘いゆく 時は満ちたり、鐘鳴りぬ 神の国こそ、ここにあり)
- 主の宴に民集う (貧しき者も富める者も 涙流せし人々も 主の招きに応えつつ 歓びの中、席につく)
- 喜び満ち、歌が舞う (竪琴の音は風に乗り 調べは天を駆け巡る 響け、声よ、尽きるまで 喜びの歌、高らかに)
- 「アーメン、栄光、世々限りなく」 (終わりはなく、始まりあり 満ちる光に影は消え すべてのものは一つなり アーメン、栄光、世々限りなく)
譜面との組合せ(資料の画像)
※切り貼りした元の譜面はヘンレ版